木の家・古川設計室    
   
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  熊本の冬物語
「冬暖かく、夏涼しい家」というキャッチコピーを最近よく目にする。布団には温かい冬布団と涼しげな夏布団があり冬・夏と切り替えられるが、家の床・壁・天井に入れた断熱材は冬・夏と切り替えることはできない。「夏涼しい」というコピーをひも解いてみると、どうやら夏も部屋を閉め切ってエアコンで冷やすことが前提で、エアコン効率が良いということのようだ。では、ここで言う「冬暖かい」家とは、どんなものだろうか。

 
  1. 熱が最も逃げやすい窓を小さくして、壁を多くする。
  2. 建物の凸凹をつくらず、2階建てなら外壁の表面積が小さくなる総2階にして熱を逃げにくくする。
  3. 気密性能を上げるために防湿シートと気密テープを使用して、家全体を包み、隙間を最小にする。空気の入れ替えは換気扇に頼る。
  確かに、家をビニールで包み、ふかふかの布団(断熱材)を被れば暖かいはずだ。これは冬だけのことを考えれば効果的かもしれないが、日本には四季があり、春・秋には心地のよいそよ風を、夏の夜には涼しい夜風を、冬だって暖かい日差しを家の中に採り込みたい。ここで言う「冬暖かい家」は、開放的な家に慣れ親しんだ者には苦痛でしかない。他に方法はないのだろうか。

■夏と冬が長くなり、春と秋が短くなったってホント?
間違いである。自然は変わらない。異常気象であったり、年平均気温のわずかな上昇はあるが、春と秋は短くなっていない。人間が変わっているのだ。窓を閉め切り、エアコンに頼る生活が、季節感と人の体感センサーを鈍らせている。夏物語で述べたように、施設の中につかり、自然から遠ざかると、冬と夏の人の体感センサーがうまく切り替えられなくなってしまうのだ。夏は、汗をかいたり、扇風機にあたったり、団扇を仰いだり、冬は、鳥肌が立ったり、厚着をしたりと人は冬は冬バージョンの体になり、夏は夏バージョンの体になるのにその能力を失ってしまっている。

■まず九州の緯度を考えよう!
日本の緯度を世界地図にあてはめてみると、北海道はパリで九州はイタリアよりずっと南のバクダッドと同じである。経産省や環境省は日本の基準がドイツやフランス、韓国に比べて低いからと欧米並みの基準が必要だという。それは北海道や東北の寒い地方の話であって、九州には九州に合った断熱法を考えるべきだ。


図1:世界地図を見ると熊本はバクダットと同じ
 

■体感温度について
人間の肌が感じる温度の感覚を数値に表したものを体感温度という。体感温度は気温だけでなく湿度、風速、輻射などによっても大きく影響を受ける。ここに、湿度と室温に着目した快適範囲のグラフがある(図2)。快適だと感じる冬の室温は13℃から22℃とかなり開きがある。個人差はもちろんあるが、湿度と風速の影響まで考えてみよう。冬に窓を開ける人はいないので、風があるとすれば、24時間換気扇やエアコン暖房機器の風である。室温24℃、湿度20%、風速1mの場合と、室温17℃、湿度80%、風速ゼロの体感温度はほぼ同じなのである。
図2:湿度が低いと、快適と感じる室内気温の範囲が広い
 
■熊本での家づくり
*風を起こさない
「熊本の夏物語」では、風速1mで体感温度は0.3℃下がると説明した。扇風機はその効果を利用したもので、冬これをやると逆効果である。エアコンやファンヒーターは風で熱を送る。風速2mとすれば体感温度を0.6℃も下げてしまう。風の力を利用した暖房方法はよくない。風を利用しない暖房は床暖房やヒートパネル、ストーブ等の直火暖房のような輻射暖房である。

*湿度を上げる
体感温度と湿度の関係を見てみよう。同じ温度でも湿度が高いと体感温度は上がる。これは、夏でも冬でも同じである。最近の住宅は内部結露が起きるからと解放型ストーブをきらう。国がすすめている省エネ住宅でも「ストーブにヤカンは置かないように」と注意喚起をしている。家の中は乾燥し、それと同時に体感温度も下がるので、ますます室温を上げなければならない。
湿度を上げたいなら、そもそも家の中に大きな加湿装置がある。浴室である。浴室の湿気を換気扇で排除するのは勿体ない、浴室から洗面、居間へと湿気を呼び込み湿度を10%上げれば体感温度は1℃上がる。
湿度を調整してくれるのは土壁や土間の三和土が一番で、次に厚い木材、漆喰、藁等である。しかし土壁は、保湿性はあるが断熱性がない。あちらを取ればこちらがまずい。兼ね合いが大事だ。

*緩衝空間
日本の住宅の縁側は世界に例を見ない。夏の暑さ対策と冬の寒さ対策に有効だ。外の寒さを室内に入れない仕組みが縁側である。夏は解放して縁側は外部的要素が強くなり、冬は閉じて内部的要素となる。日当たりが良い日は日向ぼっこの場所となる。
ほどほどの効果があり、厳寒な北海道にはないものだ。

*断熱材
断熱材は価格が安く施工も簡単なグラスウールが一般的である。しかし、吸湿効果がない。断熱すれば温度差が発生し結露しやすくなる。吸湿効果がある断熱材なら吸湿して内部結露は起きにくいが、グラスウールには発生する。施工がよければ結露しないという人がいるが、それはグラスウールの施工ではなく、部屋内側にビニールシートをきっちり目張りしなければならないということである。吸湿しない壁は夏に住人にとって不快となる。
 

*部分暖房
全館冷暖房がよいというのは自然と対抗しなければならない寒い地方の話だ。
暖房方法には全館冷暖房と部分暖房に分けられる。寒い地方は効率の良い全館冷暖房である。閉め切ると空気環境が悪くなり24時間換気扇が必要となる。主な部屋は18℃、寝室や子供部屋や洗面・トイレは15℃、納戸は10℃程度の部分暖房が熊本ではよい。
全館冷暖房にしないとヒートショックで12000人が死んだという嘘情報に惑わされてはいけない。(建築ジャーナル2013年2月号に記載)

■熊本での家づくりのまとめ

家づくりの本は世の中に氾濫しているが、東京を中心に考えたものが多く熊本に合わない。冬のことしか考えない窓の小さな家ではなく、夏のことも考えた、冬のための家づくりの方法とは以下のように考える。
 
  1. 吸湿性能の高い材料を使い、調湿性を高める。
  2. 吸湿性のある断熱材をつかう。グラスウールやウレタンなどの吸湿性のない断熱材にして、室内側に防湿シートを使った断熱方法は採用しない。
  3. 縁側などのバッファゾーンを利用する。
  4. 蓄熱性の高い材料を使用し、床、壁、天井を暖めて輻射熱を利用する。
  5. 温度ムラをなくすために風を送るのは逆効果である。3〜4℃の温度ムラは気にしなことである。ムラ調整のためのエネルギー消費量が大きい。
  6. 九州では、全館冷暖房は必要ない。部分暖房を採用しよう。17〜18℃ぐらいで室温をあまり上げずに、湿度と輻射熱を利用する。
  7. 風を起こす暖房は使わない。エアコンやファンヒーターは採用しない。
  8. 内部結露防止のために室内を乾燥させなければならない家にしない。つまり、室内壁下地にビニールの防湿シートを貼るのは良くない。加湿器を使えない家は健康に悪いと思ってよい。
  9. 土壁は蓄熱には効果がある。夏のひんやり感もある。しかし、断熱性能がないので、土壁の外部に断熱材を少し入れると、蓄熱性能との相乗効果が発揮できる。
   
           
   
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